11-1. 保管

ゼラチンの保存に際しては、一般的な乾燥食品の保存手段が取れれば十分で、特殊な配慮は必要ありません。乾燥した状態を保てれば、ゼラチンは、長期間保管しても変質、変敗しないのです。
しかし、湿度の高い環境下の保管で吸湿し、水分が16%以上になると、固まったり、カビが発生することがあります。また、直射日光(紫外線)にさらしたり、高温下での保管やホルマリンなどの有機溶媒との接触によって不溶化するので注意が必要です。


以下に保存上の注意事項をまとめました。

  • 高温下での長期保管を避ける
  • 直射日光を避ける
  • 有機溶剤と同じ場所に保管しない
  • 保存容器は密閉し、吸湿を防ぐ

11-2. 溶解法

ゼラチンの溶解方法には、「膨潤溶解法」と「直接溶解法」の2つの方法があります。以下の作業要因によって、どちらが適切かを判断するのです。

  1. ゼラチンの粒度
  2. ゼラチン溶液の濃度
  3. 時間的制約
  4. 溶解作業の規模
  5. 溶解設備(容器形状、撹拌装置など)

「膨潤溶解法」

ゼラチン粉末をあらかじめ冷水中で膨潤したのち、加熱溶解する方法。どちらかといえば、小規模の溶解作業に適した方法で、溶解の規模が大きくなると、膨潤ゼラチンの攪拌が困難になったり、冷水を加温するのに長時間を要します。膨潤作業において、特に細粉のゼラチンの場合、攪拌、分散が十分でないと、部分的に膨潤しないことも。ゼラチン粒子を、むらなく、十分に吸水させることさえできれば、溶解の失敗はほとんどありません。

 

一般的な溶解条件は、以下の通りです。
膨潤時間: 30~60分
膨潤温度: 10~25℃
溶解温度: 50~60℃

「直接溶解法」

ゼラチン粉末を温水に、攪拌しながら直接投入して溶解する方法。容器中でのゼラチン粉末の分散が十分なされれば、膨潤溶解法に比べて、溶解時間は非常に短縮できます。粉末の分散を完全にし、かつ攪拌による気泡の巻き込みを防ぐため、容器や攪拌機を考慮しなければなりません。


一般的な溶解条件は、以下の通りです。
溶解温度: 60~70℃
溶解時間: 15~20分


また、ゼラチンの溶解作業における一般的な注意事項を下記に記載します。

  1. ダマの発生を防ぐには、通常の場合、水の中にゼラチン粉末を投入する方がよい。
  2. 過度の加熱によるゼラチンの物性劣化を防ぐため、ゼラチン溶液の局所的な加熱や煮沸は行なわないこと。また、溶解終了後は、粗熱を取り、固まらない程度(40~50℃前後)まで溶液の温度を下げたほうがよい。
  3. ゼラチンの物性劣化は、低pHもしくは高pHの雰囲気で起こりやすい。このため、果汁やクエン酸の添加は、ゼラチンの溶解と同時に行なわず、最終に近い工程で行なう方がよい。

11-3. 加熱による影響

ゼラチン溶液を加温した状態で長時間保存すると、加水分解によりゼラチンの低分子化が起こり、粘度やゼリー強度が低下します。物性劣化の程度は、ゼラチン溶液のpH、温度、加熱時間によって変化します。
<図11-3-1, 2>に、アルカリ処理ゼラチン(6.67%, pH5.6)を、60℃で保存した場合の物性変化を示しました。初期物性は粘度が 3.0mPa・s, 3.7mPa・s, 4.5mPa・s、ゼリー強度が 115g, 165g, 215g(JIS K6503)です。両物性ともに、加熱により経時的に劣化し、数値が低下していくのが分かります。

<図11-3-1>
加熱による粘度の経時変化

<図11-3-2>
加熱によるゼリー強度の経時変化

粘度 4.5mPa・s、ゼリー強度 215g のアルカリ処理ゼラチン(6.67%, pH5.6)を、50℃~80℃まで温度を変えて保存したときの物性劣化を<図11-3-3, 4>に示します。加熱温度が高くなるほど、物性劣化の程度は大きくなっていきます。

<図11-3-3>
加熱温度の影響 ~ 粘度

<図11-3-4>
加熱温度の影響 ~ ゼリー強度

粘度劣化に及ぼす保存pHおよびゼラチン濃度の影響を、<図11-3-5, 6>に示しました。アルカリ処理ゼラチン(粘度 4.5mPa・s)を、所定のpH、濃度の溶液に調製し、60℃で加熱保存しています。なお、加熱処理後の粘度は、検液を 6.67%、pH5.6に再調整して、測定。pHについては、中性域から離れるほど、粘度低下の程度が大きく、高濃度のゼラチン溶液の方が物性劣化は少ない。

<図11-3-5>
保存pHの影響

<図11-3-6>
ゼラチン濃度の影響

ゼラチンの物性劣化は、最終商品の特性に大きく影響するため、ゼラチン溶解後の加工工程における加熱処理は、可能な限り低温、短時間で行なう必要があります。

11-4. バクテリア(殺菌)

ゼラチンは、バクテリアの培地として適しているように、溶液やゼリーの状態では、空気や容器、用水などを介したバクテリア汚染の影響を受けやすいので注意しましょう。一般的にいわれるように、バクテリアの増殖性は温度やpHによって変化するが、汚染から5~6時間経過すると菌数が急激に増加し始めます。ゼラチン溶液がバクテリアの影響を受けると、ゲル化能が低下したり、粘度の低下やにごりの発生が起こります。従って、ゼラチンを使用する際は、大量にまとめて溶解、調液して長時間溶液状態で保管することは避け、その日のうちに使い切る工夫が必要です。また、数日にわたるような長時間の製造作業の場合は、定期的に装置や配管の洗浄、滅菌を行なう方がよいでしょう。

11-5. タンパク質分解酵素の混入

ゼラチンは、わずかなタンパク質分解酵素の混入でも容易に分解され、粘度が低下したり、ゲル化能を失ないます。乾燥ゼラチンあたり数ppmの酵素でも、ゼラチンの物性に著しく影響します。
パイナップルやパパイヤ、キウイ、メロンなどのタンパク質分解酵素を含んだ果物とゼラチンを一緒に用いるときは、加熱して酵素を失活させるか、缶詰や瓶詰などの調理品を使用しなければなりません。

11-6. ゼリーのにごり

「等イオン点」に記載の通り、ゼラチン水溶液は、等イオン点を境にして荷電が変化します。等イオン点より低いpH側では+(プラス)に荷電しているため、-(マイナス)荷電をもつポリフェノール類、酸性多糖類と凝集反応を起こして白濁したり、沈殿が発生したりすることがあるので注意が必要です。<図11-6>に酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチンを使用して溶液のpHを変化させた紅茶ゼリーの状態を示しました。等イオン点付近以下で白濁していることがわかります。

<図11-6>
紅茶ゼリーのにごり