コラーゲンは多細胞動物の細胞外に存在するタンパク質であり、酸や酵素を用いることで抽出することができます。コラーゲンを加熱変性したものがゼラチンであり、ゼラチンを酵素や高熱処理により低分子化したものをコラーゲンペプチド、もしくはゼラチン加水分解物と呼んでいます。ゼラチンとコラーゲンペプチドの大きな特性の違いは、ゲル化能の有無です。

コラーゲン関連物質は生体由来の物質であるため、生体親和性及び生体吸収性に非常に優れています。また、それぞれに優れた機能を有しているため、医療分野において共に古くから応用されています。
多くの細胞の表面には、インテグリンをはじめとしたコラーゲン接着タンパク質が発現しています。そのため、コラーゲンは様々な細胞に対して非常に強い接着性を有しています。
骨芽細胞等の一部の細胞は、コラーゲン分子を認識することで本来の機能を発揮し、効率よく分化・増殖します。そのため、人工皮膚や人工骨の優れた原材料として活用されています。また、幹細胞からの分化培養時の基材としても広く使用されています。細胞接着性を持つ素材は多く存在していますが、コラーゲンのように生体模倣性を有する素材はあまり知られておりません。
コラーゲン溶液は、塩濃度を生理的条件下に調整し37℃付近に置くことによりゲルを形成いたします。そのため、コラーゲンゲル内もしくはコラーゲンゲル上で細胞培養を行うことが可能です。細胞親和性および生体模倣性を有し、37℃でゲルを形成できる物質はコラーゲン以外にほとんど知られておりません。
ゼラチン自体の細胞接着性はあまり高くないと言われています。しかしゼラチンは、血液や培養液中に含まれる細胞接着因子であるフィブロネクチンに対して高い親和性を有しています。そのため、ゼラチンを基材にコーティングすることで高い細胞接着性を付与することができます。
ゼラチン溶液は冷却するとゲルを形成し、加温すると溶解してゾル状態になります。このゾルーゲル転移は可逆的に行うことが可能であり、ゼラチンの最も特徴的な機能と言えます。
ゼラチンは溶解性に優れており、水はもちろん一部の有機溶媒にも溶解します。またアミノ基・カルボキシル基を豊富に有しているので、様々な化学修飾を施すことができます。
分子量の大きいゼラチンは高い粘性を有します。この性質をうまく利用することで、医薬品などの溶液に適切な粘性を与えることができます。
ゼラチンは保護コロイド性を有する親水コロイドです。そのため、溶液中での疎水コロイドの凝集防止効果が期待できます。
医療用途、特に再生医療用途では様々な形状に加工できる材料が求められています。コラーゲン・ゼラチンは共に優れた形状加工性を有しており、これまでにもスポンジ状、シート状、粒子状など様々な形状に加工され使用されてきました。今後、3Dプリンタやエレクトロスピニングなどの新技術との組み合わせにより、より新しい加工体が生み出されることが期待されています。

ワクチンや抗体など各種医薬品の安定剤・賦形剤として、コラーゲンペプチドは古くから使用されています。多くのコラーゲンペプチドは分子量数千程度まで低分子化されていますので、高濃度でも粘性が低く、ゲル化も起こりません。また抗原性が低いことも知られています。今後、細胞治療や再生医療の分野においても応用が期待されています。