8-1. ゼラチン皮膜の応用

非常に強力な皮膜形成能をもっているゼラチン。その皮膜は、ハードカプセルやソフトカプセル、コーティング剤などに利用され、内容物の酸化や吸湿による変質を防ぐとともに、刺激性薬品の服用を容易にします。また、つや出しや糖衣、色素や香料の添加による着色や着香にも使用されており、その他、写真フィルムや印画紙の感材層や保護層にも幅広くゼラチンが利用されているのです。

8-2. カプセル

日本薬局方は、カプセルを次のように定義しています。「カプセル剤は、医薬品を液状、懸濁状、のり状、粉末状又は顆粒状などの形でカプセルに充てんするか、又はカプセル基剤で被包成型して製したもの」とされ、硬カプセル剤(ハードカプセル)と軟カプセル剤(ソフトカプセル)の2種類に大別されます。


カプセル基剤にゼラチンが用いられる理由は、主として以下のようなゼラチンの機能、性質によるものです。
  1. ゾル・ゲル変化する。
  2. 皮膜形成能を有し、その皮膜が機械的強度に優れる。
  3. 毒性がなく、体内で容易に崩壊、吸収される。
  4. 入手が容易で、安価である。


ハードカプセルの製造方法は、色素などが調合されたゼラチン溶液に、カプセル形のピンを漬け、引き上げて反転する間に冷却し、均一なゲル皮膜を作ります。これを通風乾燥機で乾燥した後、ピンから引き抜き、所定の長さにカット。このプロセスからわかるように、色素や酸化チタンを除けば、ハードカプセルの成分はほとんどゼラチンなのです。ハードカプセルは空のボディとキャップの1組からなり、ボディに粉末や顆粒、ペースト、液体の薬剤を充填し、キャップを接合して、薬剤カプセルとなります。


一方、ソフトカプセルはゼラチンにグリセリンやソルビトールを加えて基剤を調製し、液状もしくはペースト状の薬剤を被包して、一定の形状に成形したもの。ソフトカプセル製造では、ゼラチン皮膜の形成と薬剤充填を同時に行ない、カプセルを完成させます。製造法として、ロータリー法と2重ノズル法が一般的に用いられます。ロータリー法は、カプセル鋳型を持つ一対の回転ローラーに、2枚のゼラチンシートを送り、薬剤を注入、充填して、連続的にカプセルを成形し、打ち抜きます。2重ノズル法とは、流動パラフィンなどの冷媒中にセットした2重ノズルの中心から薬剤、外側からゼラチン溶液を連続的に供給して、球形カプセルを製造する方法です。後者はシームレスなカプセルができるが、形状が球に限定され、サイズも制約されるため、前者の製造法が主流となっています。ソフトカプセルは、医薬品の他に、ビタミンEやEPAなど、サプリメントや健康食品にも多く利用されています。