工業的なスケールで生産されるゼラチンは、主として牛骨および牛皮、豚皮、豚骨、魚鱗を原料としています。これらの原料の中でゼラチンに転化される親物質は、「コラーゲン」と呼ばれるタンパク質です。<表3-1><図3-2>にコラーゲンの概要を示します。


骨や皮中に含まれるコラーゲンは難溶性の物質ですが、これを酸やアルカリで前処理(後述)した後、加熱すると3本鎖らせんの分子構造がこわれ、ランダムな3本の分子に分かれます。このようにして熱変性し、可溶化されたコラーゲンを「ゼラチン」と呼びます。

<表3-1> コラーゲンの概要

分布

線維たん白質の一つで、動物の骨、皮、腱などの結合組織に広く分布している。
脊椎動物が含有するたん白質の3分の1を占めるといわれている。

組成

それぞれ約10万の分子量をもったポリペプチド鎖が3本集まり、らせん構造のユニットを構成している。そして、このユニットが規則的に集合し、分子間結合を生じて、長い線維を形成している。

形状

長さ : 約 300 nm
太さ : 約 1.5 nm

分子量

約 30万(1ユニット)

アミノ酸組成

グリシン、イミノ酸(プロリン、オキシプロリン)が、それぞれ全体の3分の1、9分の2と特異的に多い。シスチン、トリプトファンは存在しない。ゼラチンのアミノ酸組成は、コラーゲンとほぼ同一である。

<図3-2> コラーゲンの構造