世界初の潰瘍性大腸炎患者への

移植治療に用いられたミニ臓器の培養に

beMatrix collagen ATが

使用されました

 

 東京医科歯科大学 岡本隆一教授*らの研究グループは、難病の潰瘍(かいよう)性大腸炎の患者の腸から採取した組織を使って、「腸上皮オルガノイド」と呼ばれるミニ臓器(以下、「ミニ臓器」という)を作り、患者自身へと移植する世界初の手術に成功したと2022年7月7日発表しました。

 患者の健全な大腸から採取した少量の組織を、移植に必要な量の「ミニ臓器」まで培養するためにbeMatrix collagen(ビーマトリックスコラーゲン)ATが使用されましたのでお知らせします。

 

*:国立大学法人東京医科歯科大学(TMDU)大学院医歯学総合研究科 消化器病態学

 

■経緯

 2014年末頃に東京医科歯科大学 岡本隆一教授から弊社総合研究所バイオメディカル部へ組織培養に適したコラーゲンの紹介依頼があり、beMatrix collagen ATをご提供しました。以来、岡本教授の研究グループからの品質要求にお応えしつつ、安全性の高い製品をこれまでお届けしてまいりました。この度の臨床研究を目的とした移植手術の成功の報道に際し、心からお慶び申し上げます。

■組織移植治療とコラーゲンの安全性

 同大学プレスリリースによると、潰瘍性大腸炎患者は国内に22万人以上いると推計され、その中でも様々な治療を行っても治療効果があまり上がらない「難治性」潰瘍患者に対しては、根本的な治療法がないとされていました。岡本隆一教授らの研究グループは、患者の健全な大腸から少量の粘膜組織を内視鏡を使って採取、患者自身の腸上皮細胞を含む「自家腸上皮オルガノイド(=ミニ臓器)」をコラーゲン含有の培養液内で移植に必要な量まで培養し、この難治性潰瘍患者に対する移植を行いました

 このミニ臓器(直径100~200μm)はコラーゲンの中に懸濁した状態で難治性潰瘍部へと移植されるため、コラーゲンには高い安全性が求められており、弊社beMatrix collagen ATは、ミニ臓器の培養と患者への移植に対し最適な医療材料と評価されたと考えています。

 

■今後の展望

 岡本隆一教授は、今後1年間にわたって患者の経過を観察すると共に2例目への移植を目指すとしており、弊社は同教授の研究グループへ安全性の高いコラーゲンを今後も継続して提供すると共に、難病の治療法の普及に貢献していきたいと考えています。

 

潰瘍性大腸炎:厚生労働省が指定する難病の一つで、大腸の粘膜にびらんや腫瘍ができ、腹痛や血便を伴う下痢を起こす原因不明の病気。症状が重い場合は、入院や大腸の全摘出術が必要となる場合がある。

 

オルガノイド:「ミニ臓器」とも呼ばれ、体外で3次元構造を持ち、小さな臓器の様な構造と機能を備えた細胞の集合体。腸上皮オルガノイドは、腸上皮幹細胞を含み、適切な環境と操作の下で大量・長期に増やすことが可能とされる